【中小企業向け】キャッシュフロー計算書の作り方・Excelテンプレート有り

財務諸表の中でも非常に重要な位置づけである以下3つの書類を「財務三表」と呼びます。

  • 貸借対照表:決算日時点の資産、負債、純資産
  • 損益計算書:年度の収益、費用、利益
  • キャッシュフロー計算書:年度の現金の流れ
びっくり男性

えっ?キャッシュフロー計算書なんてウチの会社では作っていないけど?

林真史

大丈夫です。
多くの投資家から資金を調達する上場企業ではキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられていますが、非上場企業に作成義務はありません。

中小企業の経営者にとっては、キャッシュフロー計算書を作るよりも「資金繰り表」を作成して、将来の現金の見通しを立てる方が重要です。

ただ、キャッシュフロー計算書は「資金繰り表」よりも簡単に作成可能です。これを使って過去の自社の現金の流れをわかりやすく表して分析することが可能です

本記事では、キャッシュフロー計算書の基本的な構成と、簡単に作成するための方法(とExcelテンプレート)について紹介します。
より詳しい説明についてはYouTube動画をご覧ください。

キャッシュフロー計算書の基本構成

キャッシュフロー計算書は、会計年度の期首から期末の現預金の増加・減少を、以下の3つのパートに分割して表します。

営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは、企業の主たる営業活動から得られる現金の流入と流出を示します。
これには、売上収入、仕入れや経費の支払い、給与の支払いなどが含まれます。

増加要因

  1. 売上収入の増加
    • 商品やサービスを販売した際に受け取る現金。
    • 例:製品の売上による現金収入、サービス提供による手数料収入。
  2. 前受金の受領
    • 顧客から先に受け取る支払い。
    • 例:次期分の商品の前払い金、サービスの先払い費用。
  3. 売掛金の回収
    • 売掛金(掛け売り)の回収による現金の増加。
    • 例:以前に掛け売りした商品の代金を受け取る。
  4. その他営業収入
    • 営業活動に関連する雑収入。
    • 例:リース収入、営業関連の補助金。

減少要因

  1. 仕入れや材料費の支払い
    • 商品の仕入れや製造に必要な原材料の購入費用。
    • 例:原材料の現金購入、商品仕入れの代金支払い。
  2. 従業員給与の支払い
    • 従業員への給与やボーナスの支払い。
    • 例:月々の給与、年末のボーナス。
  3. 営業関連の経費支払い
    • 営業活動に伴う経費の支払い。
    • 例:広告宣伝費、オフィスの家賃、光熱費。
  4. 支払手形の支払い
    • 支払手形の期日到来による現金の支出。
    • 例:仕入れに伴う支払手形の現金支払い。
  5. その他営業支出
    • 営業活動に関連する雑支出。
    • 例:リース料の支払い、営業に関連する罰金やペナルティ。

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、長期的な資産の取得や売却から生じる現金の流入と流出を示します。これには、設備投資、不動産の購入や売却、他社への投資などが含まれます。

増加要因

  1. 固定資産の売却収入
    • 土地や建物、機械設備などの固定資産を売却した際に得られる現金。
    • 例:使用しなくなった工場やオフィスビルの売却による現金収入。
  2. 有価証券の売却収入
    • 株式や債券などの有価証券を売却した際に得られる現金。
    • 例:投資目的で保有していた株式を売却して得た現金収入。
  3. 貸付金の回収
    • 他社や関連会社への貸付金の返済を受け取ることによる現金の増加。
    • 例:子会社への貸付金の返済による現金回収。
  4. その他投資収入
    • 投資活動に関連するその他の現金収入。
    • 例:投資不動産の売却による収入、長期預金の解約による現金収入。

減少要因

  1. 固定資産の購入
    • 土地や建物、機械設備などの固定資産を購入するための現金支出。
    • 例:新しい工場の建設費用、製造設備の購入費用。
  2. 有価証券の購入
    • 株式や債券などの有価証券を購入するための現金支出。
    • 例:新規の株式投資、社債の購入費用。
  3. 貸付金の実行
    • 他社や関連会社への貸付金を提供するための現金支出。
    • 例:子会社への資金援助のための貸付金。
  4. その他投資支出
    • 投資活動に関連するその他の現金支出。
    • 例:投資不動産の購入費用、長期預金の新規預入。

財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは、資金調達や借入金の返済など、企業の資本構造に関連する現金の流入と流出を示します。これには、株式発行、借入金の返済、配当金の支払いなどが含まれます。

増加要因

  1. 新規借入金の受け入れ
    • 銀行や金融機関から新たに借入を行うことで得られる現金。
    • 例:事業拡大のために銀行から融資を受ける。
  2. 株式の発行
    • 新株の発行により投資家から得られる現金。
    • 例:新規事業のために株式を発行して資金調達を行う。
  3. 社債の発行
    • 社債を発行することで投資家から得られる現金。
    • 例:長期資金を調達するために社債を発行する。
  4. その他財務収入
    • その他の財務活動に関連する現金収入。
    • 例:親会社からの資金援助。

減少要因

  1. 借入金の返済
    • 既存の借入金の元本返済による現金の支出。
    • 例:銀行からの借入金の返済。
  2. 社債の償還
    • 発行した社債の元本返済による現金の支出。
    • 例:満期を迎えた社債の償還。
  3. 配当金の支払い
    • 株主に対する配当金の支払いによる現金の支出。
    • 例:株主に対する年間配当金の支払い。
  4. 自社株の買い戻し
    • 発行済みの自社株を市場から買い戻すための現金支出。
    • 例:株価安定のために自社株を買い戻す。
  5. その他財務支出
    • その他の財務活動に関連する現金支出。
    • 例:親会社への借入金返済。

キャッシュフロー計算書の作成方法

キャッシュフロー計算書の作成には、直接法と間接法の二つの方法があります。

  • 直接法:現金の収入と支出を直接記録する方法です。例えば、現金売上、現金支払いなどを個別に計上します。直接法は、現金の流れをより直感的に理解できるという利点がありますが、詳細な記録が必要です。
  • 間接法:損益計算書の純利益からスタートし、非現金項目(減価償却費など)や営業活動に関連する運転資本の変動を調整する方法です。間接法は、企業の財務データから簡単に作成できるという利点があります。
項目 直説法 間接法
基本概念 現金の収入と支出を直接的に記録 純利益から出発し、非現金項目や運転資本の変動を調整
計算の出発点 現金の流入および流出の具体的項目 損益計算書の純利益
営業活動によるキャッシュフロー 営業活動によるキャシュフロー = 現金収入 – 現金支出

売上現金収入
仕入れ支出、給与支出、その他営業経費支出

営業活動によるキャシュフロー = 純利益 + 調整項目

調整項目
減価償却費、売上債権の増減、棚卸資産の増減など

投資活動によるキャッシュフロー 固定資産売却による現金収入
固定資産購入による現金支出
有価証券売却による現金収入
有価証券購入による現金支出
貸付金の回収による現金収入
貸付金の実行による現金支出
同左
財務活動によるキャッシュフロー 新規借入による現金収入
借入金返済による現金支出
株式発行による現金収入
配当金支払いによる現金支出
自社株買い戻しによる現金支出
同左
メリット 現金の流れを直感的に理解しやすい 作成が比較的簡単、詳細な現金の内訳不要
デメリット 詳細な現金の内訳が必要、作成が複雑 現金の具体的な流れが分かりにくい

自社の経営状態を詳細に分析するのであれば直接法の方が良いですが、中小企業の場合、これを行うくらいであれば「資金繰り表」をしっかり作る方がオススメです。

間接法であれば、決算書さえ準備すれば簡単に作成可能ですので、過去数年分の自社の経営状況(現金の流れ)を大まかに把握することが可能です。

キャッシュフロー計算書を簡単作成 Excelテンプレート

「間接法であれば、簡単にキャッシュフロー計算書を作ることができる」・・・とはいっても、それなりに難しいので簡易的なキャッシュフロー計算書を作成するためのテンプレートを作成しました。コチラからダウンロードしてご利用ください。

 テンプレートご利用にあたっての注意点

  • キャッシュフロー計算書の作成には、最低2期分の決算書が必要です。本テンプレートでは最大5期分の決算書から4期分のキャッシュフロー計算書の作成が可能です。
  • 本テンプレートでは、中小企業が自社の経営状況の分析を行うため、貸借対照表および損益計算書から簡易的にキャッシュフロー計算書(間接法)を作成することを目的としています。(簡単に利用できるようにするため、厳密な計算を省いている部分があります。)
  • したがって、上場企業のキャッシュフロー計算書の作成を目的とはしていません。
  • 本テンプレートで計算された結果は概算であるため、詳しくは顧問税理士等にご相談ください。

自社の経営状況・財務状況に関するご相談は、以下のお問い合わせフォームよりお申し込みください。