先月(2021年7月17日)に、日本ディープラーニング協会のG検定を受験しました。
ここ数年でさまざまなシーンでAIの活用が進んでいます。「AIってなんだかスゴイ」という漠然としたイメージはあるものの、そもそも「AIで何ができるのか? 」「どのような活用方法できるのか?」といったことを理解している人はあまり多くないように思います。私自身がG検定を受験してみてものすごく勉強になったので、今回はG検定について紹介していきます。
G検定とは
G検定とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定する」試験です。
ディープラーニングとは、AI(人工知能)分野で、近年もっとも注目されている手法です。G検定の「G」は、ジェネラリストの意味で「広範囲な分野の知識を持ち、多面的な視点で全体を統括できる人材・役職」を指す言葉です。対義語はスペシャリストで、特定分野に特化した専門家がそれにあたります。
ディープラーニングのジェネラリスト検定となっていますが、G検定のシラバス(学習範囲)は「AIとは何か?」「AI発達の歴史とその動向」「AIの課題」「機械学習のさまざまな手法」「ディープラーニングの概要と様々な手法」「AIの実装・導入における社会的・倫理的・法律的な注意点」など、AI全般について学ぶことができます。(勉強する必要があるとも言います。)なので、以下のような方には、チャレンジしてみることをお勧めします。
- AIを使ったビジネスを提供したいと考えている人
- 自社のビジネスをAIを使って革新したい経営者・IT部門の責任者・デジタル推進プロジェクトの担当者
- 純粋にAIについて興味がある人
G検定の受験方法・試験の内容
G検定の試験は年3回のペースで開催されています。受験の申し込みは、JDLAのG検定WEBサイトから申し込み支払いもクレジットカードなどが利用できるため、オンラインで完結できます。受験料は一般:13,200円(税込)、学生:5,500円(税込)です。
そして、申し込みだけではなく、試験自体も自宅のパソコン(WEBブラウザ)を使って受験し、試験会場に行く必要もなくすべてオンラインで完結しています。試験形式は問題に対して複数ある選択肢から正解を選択するいわゆるマークシート方式です(画面をクリックして選ぶのでマークシートを塗りつぶすわけではありませんが。。。)。自宅のパソコンで受験するため、参考書やWEB検索などのカンニングは認められていますが、2時間で約120問に回答する必要があるため、実際には参考書やWEBを調べている時間はほとんどありません。
受験のあと、2週間ぐらいで合否を知らせるメールが送られてきます。
G検定合格に向けた学習方法
G検定合格対策のオンライン講座なども存在していますが、基本的には独学で対応可能だと思います。自分自身の経験から学習方法について紹介しておきます。
絶対やるべきこと: 公式テキストと問題集
G検定にはJDLA公認の公式テキストが存在しています。合格者の99%はこの公式テキストを使っているのではないでしょうか。
現在の公式テキストは「第2版」ですが、Amazonなどでは初版もいまだに売られています。初版は「シラバスとあまり一致していない」とか、「公式テキストだけで合格するのは無理」といった声も聞かれるので、素直に第2版を買いましょう。表紙に「第2版」と書かれているかどうか要チェックです。
公式テキストは「公式」とうたわれている通り、G検定のシラバスをきれいに網羅しています。シラバスの大項目ごとに章にまとめられており、章末には実際の試験に近いスタイルの問題が掲載されいるので、どのような問題が出てくるのかを把握することもできます。
ただし、公式テキストに掲載されている問題数は多いとは言えないので、別に問題集を買って勉強するほうが良いでしょう。問題集はいろいろあるので選ぶのに悩むと思われますが、G検定の問題は最新の事例やトピックなども出てくるため、なるべく発売日時が新しいものを選ぶ方が良いと思います。私自身は下記の問題集を買いました。問題数も多く、解説も詳しく書かれているのでおすすめできる問題集だと思います。
私は買っていませんが、G検定の定番問題集で「黒本」と呼ばれる問題集の第2版が出ていますので、これから購入される方はこちらでも良いと思います。(こちらも表紙の「第2版」の記述をチェックして購入しましょう。)
できればやった方が良いこと: 無料動画での学習
公式テキストと問題集だけでも、十分合格できる力はつくと思いますが、いきなりテキストでの学習はとっかかりとしてハードルも高いのと、飽きたり、つらかったりするので、記憶の定着させるためにもAIや機械学習に関連する動画を閲覧することをおすすめします。
おすすめNo.1は、JDLAがすべてのビジネスパーソンに送るAIの基礎講座AI For Everyoneの動画です。G検定の内容の超重要な部分だけを凝縮したようなコースで、Couseraという学習プラットフォームで配信されています。修了証が発行されるテストを受けるためには費用がかかりますが、動画の講座だけであれば無料で視聴できます。合計6時間ほどで、がっつりとAIの基礎が学べます。G検定の学習の一番最初に視聴するのが良いと思います。
また、「無料で学べるオンライン講座 gacco」でも機械学習や統計などに関する講座が配信されているので、テキストでの学習の気分転換に受講するのもよいと思います。配信されている講座はその時々によって変わるため、時々のぞいて興味があるものを視聴すると良いでしょう。
その他、Youtubeでも「AI」「機械学習」「ディープラーニング」「データサイエンス」などのキーワードで引っかかてくる動画がたくさんあります。初心者向けのものから、かなりマニアックな専門家向けのものまでさまざまな動画がアップロードされているので、勉強というよりは息抜きとして視聴すると学習した内容の定着に役立つと思います。
勉強の進め方、学習期間・学習時間など
G検定はジェネラリスト向けの試験なので、プログラミングの知識などは必要ありません。AIの実装(プログラミング)についてはE(エンジニア)資格という別の試験があります。理系やITの知識があった方がとっつきやすいことは間違いありませんが、暗記も多いので文系出身の方でも対応可能だと思います。
ちなみに、暗記する内容は「ダートマス会議」といったイベント名、「マーヴィン・ミンスキー、ジョン・マッカーシー、ジェフリー・ヒントン」といった人名、「AlexNet、VGG」などディープラーニングのアルゴリズム、「シグモイド関数、ReLu関数」といった関数名など多岐にわたります。言葉だけではなく、意味や背景などを理解していないと問題には対応できないので結構大変です。
学習開始時のバックグラウンドは人それぞれで、それによって学習時間も変わるので一概には言えませんが、私の学習方法について紹介しておきます。
学習開始日時: 5月中旬ごろ (試験の2か月前)
- 公式テキストを一通り読んで、試験範囲・出題内容・出題形式などを把握 (10時間くらい)
- AI For Everyoneの動画視聴 (6時間)
- 公式テキストを精読しながら、マインドマップで自分なりのノートを作成 (30時間くらい)
- 問題集を3周回し (30時間くらい)
だいたい1日あたり1-2時間ぐらいずつ上記の学習を行いました。
G検定の合格には特に必要ではありませんが、記憶を定着させたり、実際に機械学習の手法などを使えるようになるため、上記の学習と平行してYoutubeでAI関連の動画を漁ったり、Pythonの学習も行いました。Pythonの学習は、自分のパソコンに開発環境を構築して、無料動画を見ながらプログラミングの基礎を学習したり、データコンペのテーマについて実装したりなどを行いました。G検定ではプログラムは必要ありませんが、プログラミングに使用するライブラリの名前や様々なアルゴリズムの内容について問われたりするため、実際にプログラミングをしてみることは単に暗記するよりは有効だと思います。(ただし、時間はかかるので万人におすすめする方法ではありません。)
G検定の難易度、合格率
私が受けた2021年第2回(2021#2)の結果発表では「7,450名が受験し、4,582名が合格」とあるので合格率は61.5%となっています。合格率としてはそれほど低くないと思います。私も合格していました。
G検定の合格ラインは公開されていませんが、合格した人も「難しかった」と感じる人が多いようです。私自身も、しっかり勉強したので合格できましたが、公式テキストを1回読むくらいでは合格できないと感じました。
ちなみに、試験範囲ごとの平均得点率と私の得点率は以下のようになってます。配点割合などは不明ですが、試験範囲全体をきっちり抑えていくのが重要だと思います。また数理・統計は全体的に得点率が低いですが、これは暗記ではなく計算が必要となる問題があるため、1問あたり30秒しか時間がないことから、捨て問にされているためと思われます。
試験範囲 | 平均得点率 | 林の得点率 |
1.人工知能とは.人工知能をめぐる動向.人工知能分野の問題 | 78% | 90% |
2.機械学習の具体的手法 | 65% | 100% |
3.ディープラーニングの概要 | 66% | 84% |
4.ディープラーニングの手法 | 62% | 89% |
5.ディープラーニングの社会実装に向けて | 67% | 70% |
6.数理・統計 | 56% | 66% |
まとめ G検定のススメ
G検定の受験を通じて、AIについての理解を体系的に深めることができました。ディープラーニングの技術は日進月歩なので、継続的に知識をアップデートしていく必要がありますが、G検定やE資格の合格者だけが加入できるコミュニティがあり、コミュニティを通じて新たな知識や事例などに触れていくこともできます。AIで何ができるのか、そして何が難しいのかがわからないとビジネスでAIを活用することはできませんので、特におすすめしたいです。